マインドフルネスの実践方法

「マインドフルネス=瞑想」と思っている方も多いかもしれませんが、先に述べたようにマインドフルネスとは本来「心の状態」を表す概念です。実はその実践方法は瞑想だけではありません。ご飯を味わって食べる、一歩一歩を踏みしめて歩く、音に耳を傾ける。このような「ただ今この瞬間に集中している」状態をつくることができれば、どんな小さなアクションでもマインドフルネスの実践となります。

その中でも、大きく分けて「公式」「非公式」とその実践方法を分けて考えるのが一般的です。

公式の実践とは、主に「瞑想」を指します。意図的に瞑想の時間を取って、ガイド付き瞑想やボディースキャン、さらに歩く瞑想などを行います。

これに対し非公式の実践は「生活瞑想」とも呼ばれ、皿洗いなどの雑用をしているときに自分の周りで起こっていることに意識を集中します。これは禅寺などで行われる「お勤め」にも似たもので、とにかく行なっている作業に全意識を集中させ、「今に打ち込む」ことが大切です。

このように、マインドフルネスはさまざまな方法で実践することができますが、公式・非公式の実践を複合的に取り入れることをおすすめします。なぜならこれらの実践は互いに作用し合うことによってその効果を増すからです。例えば、瞑想を行い集中テクニックを習得すると、毎日の仕事や雑用をこなす能力も向上します。脳の構造を実際に変えることができる、静坐瞑想は非常に重要です。つまり、公式実践でマインドフルネスの「土台」を作り、非公式実践で日常生活をどのようにマインドフルに過ごすかの「応用」を行うという方法がバランスの良い実践だと言えます。

では、マインドフルネス瞑想のやり方をご紹介しましょう。

マインドフルネス瞑想はいたってシンプルです。基本的に自然呼吸をしながら、体の中や自分の周りで起こっているものを観察する、ということ以外ルールはありません。ここでは5段階の呼吸瞑想のやり方をご説明します。

 1 - まずは、鼻から自然な呼吸を繰り返して、1から10まで数えてみましょう。息を吸って、吐きながら1と数えます。これを10まで繰り返し、10までいったら1に戻ります。目的は呼吸を数えることではなく、一つ一つの呼吸に集中することです。カウントに集中するあまり、不自然な呼吸になったり、意識がおろそかになったりしてしまわぬように注意しましょう。

2 - 次も同様に呼吸をカウントしますが、今度は数えるポイントを変えてみます。息を吸う前に数え始めます。1と数えてから息を吸い、息を吐き、次に吸う前に2と数えます。第一段階と同様、10まで同じことを繰り返し、10までいったら1に戻ります。息を数えるタイミングを変えることで、集中力を維持します。 

3 - カウントをやめて、自然に呼吸を流します。今度は呼吸が流れる「体の感覚」に意識を向けましょう。まずは鼻腔の一点集中から始めます。鼻は空気が入って出て行く、いわば呼吸の出入り口です。空気の温度や感触まで、細かく観察していきます。

4 - 今度は集中のピントを一点から全体へと広げていきます。鼻から喉、胸、お腹へと流れて行く呼吸の通り道をたどるように、体の中にある感覚や動きを眺めていきます。胸やお腹が膨らんだりしぼんだりする様子を感じることで、体と呼吸とのつながりに気づきます。全身が呼吸している感覚がつかめてくるでしょう。

5 - 最後の段階は、意識の開放です。観察の対象を体の感覚から、自分の周りにあるものすべてに広げます。音が聞こえたら「今音が聞こえたな」、匂いを感じたら「今匂いがしたな」、思考が浮かび上がってきたら「今私は〜について考えていたな」と気づき、そっと意識を呼吸の流れに戻します。その出どころについて考えたり、分析したり、追いかけたりする必要はありません。『気づく→手放す→集中する』という3ステップを繰り返します。