マインドフルネス瞑想

マインドフルネス瞑想は「気づきの瞑想」とも呼ばれ、今この瞬間にある自分の体の感覚や思考をありのまま認識していく方法です。

実践においては「今この瞬間に集中している」意識状態を作るために、さまざまな対象がアンカーとして用いられます。その中でも代表的なものが『呼吸』です。呼吸をコントロールしようとせず、自分の自然な呼吸の流れを観察します。瞑想中は色々な思考が頭に浮かんでくるのですが、それが起こった時には意識が逸れていることに気づき、そっとまた注意を呼吸のリズムへ戻すだけでいいです。

意識のアンカーとして呼吸でなく、体の感覚(五感)を利用することもできます。目の前の景色を眺める、音を聞く、匂いを嗅ぐ、食べる・飲む、触るなどの動作を行い、感覚に気づきます。

「気づきの瞑想」という名の通り、マインドフルネス瞑想では、ただ受動的に「気づく」ということを一番大切にします。呼吸のリズムに「気づく」、音に「気づく」、思考に「気づく」。意識が逸れてしまったから失敗だ、呼吸が浅いから悪い、などと価値判断をすることなく、いつも「あ、そうなんだ」という気づきを積み重ねていくことで、今この瞬間をありのまま味わうことができるようになっていきます。

瞑想の実践方法

瞑想は習慣化してこそ、その最大の効果を発揮します。私たちの脳と体は毎日の繰り返し行動によって、だんだんと習慣として覚えていくという仕組みを持ちます。まさに「継続は力なり」なのです。ですから、瞑想を始めたばかりの人は、一定の期間継続的に瞑想に取り組むことが大切です。ただし、プレッシャーを感じる必要はありません。この習慣づくりのプロセス自体に、マインドフルなアプローチを実践する機会が隠されています。

ポイントはいつも柔軟な姿勢で取り組むことです。瞑想したからといって必ずしもいい気持ちになれるとは限りません。昨日は心地よかったのに、今日はしんどかった、なんて日もあります。毎日の体調と同じように、心にもコンディションがあります。悩み事があれば思考が湧き上がってきますし、疲れていれば集中するのは難しくなります。瞑想は毎回違うものだと考えてください。単に「瞑想できない」という状態は存在しないのです。また、毎日欠かさず実践しようと、あまりにも自分に厳しく接してしまうと、だんだんと「今日は昨日よりも上手くできた」「私は成長している」という価値判断も芽生えてしまいかねません。ただ瞑想する。これだけでいいのです。何か新しいものに出会うような気持ちで、自分自身を決めつけることなく、好奇心を持って見守りましょう。

瞑想を始める前に、まずは気持ちの準備をします。私たちの目標は、思考、感情、感覚を一歩下がって眺めることです。瞑想中にどんなことを体験しても否定する必要はありません。それはそれとして手放し、意識を呼吸に戻して、瞑想を続けてみてください。

それでも思うように実践が進まなかったり、マイナスな考えばかりが浮かんできたりする時には、自分を責める代わりに、思いやりを持って自分に接してみましょう。これは、マインドフルネス瞑想の柱の一つである『セルフコンパッション』の実践です。自分に対する思いやりを示すためには、3つの実践方法があります。1つ目は、他者から自分に向けられた親切心を、謙遜せずにそのまま受け入れること。2つ目は、他者の痛みに寄り添い、共に癒しを分かち合うこと。そして3つ目は、自分の中にある自己否定や自己批判の声を観察し、その奥に隠れている「心の声」に耳を傾けることです。自分の本当の想いに歩み寄ることで、自分のための選択をすることができます。こうした思いやりのアプローチは、心が折れそうな時ほど役に立ちます。長く瞑想を続けていくと、いろいろな体験をするでしょう。うまくいくときもあれば、うまくいかない日もあるはずです。こういう時こそ自分に優しく、「こういう日もあるよね」「よく頑張っているね」という気持ちで、いろいろな経験をあるがままに受け入れてください。

瞑想を始める前にすることは?

瞑想は、呼吸に集中して、自分の内面に注意を向けることから始まります。こうした状態に入りやすくするための環境作りも大切です。瞑想をする際は、なるべく気が散らないように、快適で静かな場所で行うことをおすすめします。ただし、これはあくまでも瞑想を通してマインドフルネス実践をする場合の話です。マインドフルネスはもともと「今この瞬間に集中している状態」を指します。瞑想以外の様々な方法を用いて、日常生活でも取り入れることも可能です。

瞑想という言葉を聞くと、長い時間胡坐をかくというイメージが真っ先に頭に浮かぶのではないでしょうか。「私は坐禅も組めないので瞑想なんてできません」という反応が返ってくることがあるのですが、その必要はないのでご安心を。マインドフルネス瞑想には、「こうしなければならない」という決まりやルールがありません。どんな姿勢でもできますので、自分に合ったものを選んでください。床に足をつけて椅子に座ってもいいですし、足を組んで座ってもかまいません。自分が一番快適な姿勢で座ることが重要です。横になって瞑想することもできますが、体がリラックスしすぎると、眠くなって集中しにくくなりますので注意しましょう。瞑想中に寝てしまうことはよくあることですが、本体の目的は今この瞬間に意識を向けることだという点をお忘れなく。(※睡眠導入瞑想を除く)

瞑想とストレス

ストレスと不安感は、現代社会を代表する二大要素とも言えます。私たちは毎日何らかの形でそれらを感じています。瞑想は、こうしたストレスレベルを下げ、心身をリラックスした状態に導くことでも知られています。「MBSR(マインドフルネスストレス低減法)」はその代表的な例です。マインドフルネス瞑想にストレスを和らげる効果があることが、科学的にも証明されています。

ただし、他に根本的な原因がある慢性的なストレスや不安障害を抱えている場合、マインドフルネスや瞑想だけでは十分でないケースもあります。このような場合は、専門医に頼るなどしながら治療を進める必要があることにも注意しましょう。

マインドフルネス瞑想は、あくまでも自分の「今の状態」に気づく能力を高めるものです。「治療」というよりは、むしろ「予防」としての性質が強いのです。研究によると、瞑想は集中力や感情を司る脳の領域や回路を変え、ストレスレベルを下げるだけでなく、ストレスが多い状況下でネガティブな考えを許容する能力が高まると言われています。万が一ストレスレベルが悪化するようなことがあったとしても、瞑想を続けていくにつれ、自分の精神状態に気づく力も上がっていくので、冷静に現状を把握し、休息をとったり、専門機関に相談したり、適切なアクションを選択することができるようになります。